昭和婦人

終戦の直前に北陸の農家に末娘として生まれた、ごく平凡でな女性の人生のお話です。

5、後悔と親代わりの兄の死

小さな一件家の二階部分の社宅にとりあえず居を構え、若い二人の生活は始まりました。 引越しからとりあえずは1ヶ月間程は、終業後、日の暮れる前にまっすぐ帰宅して新婦を気遣う正之でしたが、1ヶ月も過ぎる頃から残業や付き合いで早くに帰宅することもな…

4、北端の新天地と新婚生活

不本意ながら綺麗な着物を着て見合いの席についた恵美子。 その時の見合い相手が正之、のちに夫となる相手でした。もともと結婚に興味がなかった恵美子は、互いの紹介をした仲人が退席した後ろくに正之と話もぜずに,食べるものだけ食べてさっさと帰宅しまし…

東京へ。

当時は皆、高校卒業後は長男のみが農家の家業を継ぎ家に残りました。 長男以外の男の子供は大体は他所で仕事を見つけるか、大学か専門学校に進学します。女の子たちも地元で仕事を見つけるか、家に残って家事と農作業の手伝いに専念して結婚までの時間を過ご…

3、父の死、居心地の悪い実家

恵美子がまだ十代後半の時、父親が病気で他界しました。 まだ若かった父親でしたが、長年の無理がたたったのか倒れて数週間であったいうまに逝ってしまったのです。 父親の葬儀を終え、残された家族は長男の手に委ねられました。まだ結婚して間もなかった長…

2, 母の病と青春時代

恵美子は富山の小作人の農家の末娘として生まれました。小作人とはいえ代々先祖が土地を少しづつ買い足し、当時としてはそこそこに裕福な農家の娘さんだったそうです。多くは語りませんが父親は農家の当主らしく頑丈で朴訥、いわゆる頑固で屈強な農家の長だ…

1、生家は小さな田舎の農家でした

1941年夏、恵美子は終戦の4年前に生まれました。昭和という時代のちょうど真ん中。 彼女いわく兄弟あれこれ全部合わせると多分12人はいたそうですが、戦時中の当時の栄養事情や 母親の健康状態、医療環境、流産等の諸事情により無事に成長することができた…